社員10人の会社が、VPS 1台で社内ツールをそろえる:チャット・Wiki・パスワード管理・監視の構成例

SaaSの月額を見直したい10人ほどの会社向けに、1台のVPSでチャット・社内Wiki・パスワード管理・死活監視をそろえる構成例を紹介します。自前にするものとSaaSのままにするものの分け方、1台にまとめるリスクと対策、始める順番を整理します。

最終更新: 2026/10/27

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社員が増えるにつれて、チャット、Wiki、パスワード管理などのSaaSの月額は、少しずつ膨らんでいきます。「自分たちのサーバーで動かせば安くなるのでは」と考えたとき、最初にぶつかるのが「何を、どこまで、1台のサーバーに載せてよいのか」という疑問です。

この記事では、社員10人ほどの会社を想定して、1台のVPSで社内ツールをそろえる構成の例と、考え方、失敗しやすい点を整理します。

先に決める:自前にするものと、SaaSのままにするもの

社内ツールを全部オープンソースに置き換える必要はありません。次のように分けると、運用の負担を抑えられます。

自前にしやすいもの(止まっても影響が限られ、データを自社に置く意味が大きい)

  • 社内のチャット、社内Wiki、死活監視、社内向けの小さなツール

SaaSのままのほうがよいもの(制度への対応や、止まったときの影響が大きい)

  • 会計、給与・労務、電子契約など、日本の制度に関わるもの。詳しくは「日本のSaaSの代わりになるオープンソース」で、置き換えられる範囲と、SaaSのままのほうがよい場合を整理しています。
  • 会社のメール。迷惑メールと判断されないための設定や、障害時の対応など、専門的な運用が必要です。

構成の例

次の組み合わせを、1台のVPSに載せる例です。Mattermost・BookStack・Uptime Kumaは、当サイトで画面の日本語翻訳を確認できています。Vaultwardenは、Bitwardenの公式のアプリから使うので、表示する言語はアプリ側で確認してください。Traefikは、利用者が使う画面のないツールです。

役割(置き換えるSaaS) 例 選ぶ理由と注意
チャット(Slack、Chatwork) Mattermost Slackに近い操作感で、移行しても迷いにくい。会話を話題ごとに整理したいならZulipも候補(比較)
社内Wiki(Notion、Confluence) BookStack 「本・章・ページ」の階層で、手順書を整理しやすい。エンジニアでない人も書きやすい
パスワード管理(1Passwordなど) Vaultwarden 軽く動き、公式のBitwardenのアプリが使える。HTTPSが必須で、バックアップが特に大事
死活監視(Pingdomなど) Uptime Kuma 手軽に始められ、通知先も多い。置き場所に注意(後述)
入口の振り分け Traefik Dockerで動かす複数のツールに、ドメインとHTTPSを自動で設定できる

ファイルの共有まで自前にしたい場合は、Nextcloudが候補です。ただし機能が多い分、サーバーの負担も運用の手間も大きくなるので、最初の構成には入れず、慣れてから足すのが無理のない進め方です。

1台にまとめるときの考え方

ツールごとにDockerで分ける

それぞれのツールを、Docker(Docker Compose)で別々に動かします。ツールごとに独立して更新でき、1つのツールの不具合が、ほかに広がりにくくなります。Dockerで試す前の確認点は、「Dockerで試す前に確認すること」にまとめています。

必要なメモリは「足し算」で見積もる

1台に載せるときに最も大事なのは、メモリです。ツールごとに、公式のドキュメントに推奨のスペックが書かれているので、それを調べて足し合わせます。そこに、OSとDocker自体の分と、余裕を加えた量が、VPSに必要なメモリの目安です。

当サイトでは、各ツールが必要とするメモリを、実際に測って掲載してはいません。数字は必ず、導入するツールの公式ドキュメントで確認してください。 データベースを使うツールは、特に多くのメモリが必要になることがあります。

データベースの扱い

データベースを使うツールは、ツールごとに専用のデータベースを用意すると、更新やバックアップの失敗が、ほかに影響しにくくなります。

「1台に全部」のリスクと対策

1台のサーバーにまとめると、そのサーバーが止まると、全部が同時に止まります。 特に気をつけたい点は次のとおりです。

  • 死活監視は、別の場所に置く。 Uptime Kumaを、監視したいVPSと同じ場所で動かすと、VPSが止まったときに、通知も止まってしまいます。別のVPSや、自宅のパソコン、あるいは外部の監視のサービスなど、別の場所で動かしましょう。
  • バックアップは、別の場所に取る。 同じVPSの中にだけ取っても、VPSが壊れれば一緒に失われます。resticやKopiaのようなツールで、別のストレージにも保存しておきます。
  • 戻せることを確かめる。 バックアップは、取っただけでは意味がありません。実際にデータを戻せるかを、導入の段階で一度試してください。
  • パスワード管理は慎重に。 止まったり壊れたりすると、ほかのすべてのログインに影響します。

運用にかかる時間

自前で動かすと、サーバー代のほかに、運用の時間がかかります。目安として、次の作業が必要です。

  • ツールとOSのアップデートの適用(セキュリティの修正を含む)
  • バックアップが取れているかの確認
  • 障害が起きたときの対応

担当者が1人だけだと、その人が休むと止まります。最低でも、手順を文書にして、もう1人が引き継げる状態にしておきましょう。運用コストを先に見積もる考え方は、「選び方」のページにもまとめています。

始める順番

一度に全部を始めず、影響の小さいものから段階的に進めます。

  1. 死活監視(Uptime Kuma) :止まっても業務に影響がなく、運用の練習になります。
  2. 社内Wiki(BookStack) :新しく書く文書から使い始め、既存のSaaSは、しばらく閲覧用に残します。移行の考え方は、Notionの代替のページにも書いています。
  3. チャット(Mattermost) :全員が毎日使うので、少人数で試してから広げます。
  4. パスワード管理(Vaultwarden) :最後です。バックアップと復元の手順が、きちんと回ることを確かめてから、移行します。

費用の比べ方

SaaSのままにするか、自前にするかは、次の2つを並べて比べます。

  • SaaS:各サービスの月額 × 人数(料金は、各サービスの公式サイトで確認してください)
  • 自前:VPSの月額 + 運用にかかる時間の人件費

VPSの月額だけを見ると、自前のほうが安く見えます。運用の時間をお金に換算して足すと、本当の比較になります。社員10人程度では、運用の手間のほうが大きく、SaaSのほうが得になることもあります。「データを社外に置けない」といった、費用以外の理由があるときに、自前にする意味が大きくなります。

VPSの選び方

1台に複数のツールを載せるなら、メモリに余裕のあるプランを選びましょう。まずは月払いで試し、足りなくなったらプランを上げるのが無駄のない進め方です。下に、国内のVPS4社を、最低月額の安い順に紹介しています。料金の条件(長期契約や年払いを前提にした金額かどうか)が各社で違うので、公式サイトで確認してください。

まとめ

  • 会計・労務・メールはSaaSのままにして、チャット・Wiki・監視など、影響の小さいものから自前にする
  • 必要なメモリは、各ツールの公式ドキュメントの推奨を足し算して見積もる
  • 1台にまとめると、全部が同時に止まる。監視とバックアップは、別の場所に置く
  • 運用の時間も費用に入れて比べる。社員10人程度では、SaaSのままのほうが得なこともある

どのツールから試すか迷っている場合は、「あなたに合うOSS診断」も使ってみてください。

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多くのツールは、VPSを借りる前に、手元のパソコン(Dockerなど)で試せます。

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日本語サポート重視の初心者

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関連ツール

Mattermost

代替対象: Slack / TypeScript / Apache-2.0

日本語の画面あり

開発チーム向けのセキュアなコラボレーション基盤。Slackライクなチャットを自前のサーバーで運用でき、監査・コンプライアンス要件にも対応。

スター3.9万
健全度
15,135
セキュリティSecurity7.3

BookStack

代替対象: Confluence / PHP / MIT

日本語の画面あり

書籍のような階層でマニュアルを作るWiki。社内手順書の置き場に向く。

スター1.9万
健全度
6,158
セキュリティSecurity3.2

Vaultwarden

代替対象: Bitwarden / Rust / AGPL-3.0

Bitwarden互換のパスワード管理サーバー(非公式・Rust製)。公式Bitwardenクライアントがそのまま使え、軽量で自宅サーバーでも動く。

スター7.0万
健全度
19,265
セキュリティSecurity要確認

Uptime Kuma

代替対象: Pingdom / JavaScript / MIT

日本語の画面あり

URLとポートの死活監視。日本語表示に対応し、通知先も多い。

スター9.3万
健全度
28,167
セキュリティSecurity要確認

Traefik

代替対象: AWS API Gateway / Go / MIT

AWS API Gatewayの代わりにも使える、リバースプロキシ。DockerやKubernetesで動くサービスを自動で見つけて通信を振り分け、Let's EncryptでのHTTPSの設定も自動で行う。

スター6.5万
健全度
20,221
セキュリティSecurity6.4

Nextcloud

代替対象: Google Drive / PHP / AGPL-3.0

日本語の画面あり

Google Driveや Dropbox の代替となる自前のクラウドストレージ。ファイル共有・カレンダー・連絡先を統合し、データを完全に自社管理できる。

スター3.7万
健全度
12,850
セキュリティSecurity5.3

各ツールのライセンス・提供条件は変更されることがあります。導入前に必ず公式サイトで最新の条件をご確認ください。